また終わるために

いっしょにすごしたときめき

忘れられない、忘れられない、忘れられない人

忘れられないし、忘れたくない人。そう思った瞬間、またひとつ忘れていく、あの人のことを。

「忘れられない、忘れたくない」という気持ちが記憶の反証になるんだ、つまり、そう思った瞬間、私たちはまたひとつ過去/記憶を手放しているということになる。

私はずっとさびしくないふりをしてたんだ、これでも。あの人から希薄に扱われていると思う度に、それに関して弱さを見せてはならない、と思い直しながら。苦しかった。本当はもっと、胸の痛みを越えてあの人に近づきたいと願っていた。この苦しさや痛みを越えたら、あの人ともっと近い瞬間が待っているんだと考え直して、さびしくないふりを身につけて、我慢していた。忍従とはロマンチックな隷属である。

記憶のパズルがまたひとつ欠片を喪う。もう二度と戻らない。あの人がいない明日が夢だったら良かったのに。夢の続きは途切れたまま。

あの人は私を切り分けた片方のようで、輝いてみえる。