また終わるために

いっしょにすごしたときめき

イヤイヤ、シブシブ、未練タラタラ、泣き泣き、セイセイするし、アキアキしたから、別れる。

ひとり去り、またひとり去り、いつか私の周りには誰もいなくなるだろう。記憶のなかだけが年々賑やかになり、別れたひとの顔や肢体や声が生々しくなっていく。ひとりで部屋にいると、つぎつぎと現れる過去のひとびとに茫然とすることがある。

ローマの休日」の王女は恋をした記者と別れるときに、「どのようにさよならを言ったらいいのかわかりません。いい言葉が思い浮かばないんです」という。彼は「それでいいのさ」と答える。

 

 

  柳美里