世界が私を愛してくれるので
(むごい仕方でまた時に
やさしい仕方で)
私はいつまでも孤りでいられる
【まきのまきな副音声】
忘れるということは、きれいな地獄のようでほんとうにさびしいのだろう。忘れるということは、むごいことであり、ときにやさしいことだ。けども、私はおとなになるということは、きれいな地獄でいい匂いのする幽霊になることなんじゃないかと考えていた。
私にはきれいな地獄はあわなくて、しかもいい匂いのする幽霊もつとまらなかった。ただ、適切な世界において、私はいつまでも不適切だった。
そういう暮らしの風景に自分を投げかけて、いつか世界を手に入れるために、理解するために、ひとつになるために。どこへいっても宛名のない私に、風景は、違います、と答えた。たとえば、夜中の冷蔵庫に、たとえば、秋晴れの青空に。あなたでしょうか、ちがいます、ちがいます、ちがいます・・・・・・。
世界が私を愛してくれる。むごい仕方で、ときにやさしい仕方で。