また終わるために

いっしょにすごしたときめき

幸福の瞬間たまご

幸福とかそういうものは、本当に卵のようなものだと思う。大切だからといってきつくつかむと割れてしまうし、そっと扱いすぎても気がはってかえって負担になる。

だから、古今東西何万人もの人が語るように、いちばんよいのは、パック入り卵を自転車のかごに入れてがたがたゆらしながら無造作に帰路に急ぐおばさんのように、幸福に接することに決まってる。

家に帰って2,3個割れていても「あら、われてるわ、ま、いっか。また買えば」と気軽に受けとめて、残りの卵を使っていればいいわけで、こういう対し方がいちばん大切である。不幸、というものはすべてほとんど、バランスの不在からやって来る。

 

 

     よしもとばなな