爪切りは、めんどくさいけども、両手の爪が長いままだと、習っているピアノにも不利だし、なんとなく調子が出ないんだ。だから、今朝全部そろえて短くした。
とくに不調はないかもしれないけれど、毎朝眠くて、毎週木曜日の学年集会はうっとうしい気持ちにさせるに充分だ。
私は猫背で冬服の制服を着て、白いスニーカーの曇り空みたいな汚れにうんざりしつつも、友人の家へ一緒に学校に行こうと誘いに行った。
ともちゃん、学校行こう!
返事はない。
しばらく待ってみる。7分経つ。不安が足元から這い上がってきて、ぞくりとする。
遅刻するのかもしれない、返事がないから私だけまるでとびだしたピリオドの孤独だ。
ともちゃーーーん!
まだない。
15分経った。もう遅刻ぎりぎりだ。
先に行くね、といって出た。
忘れ物に気づき、急いで自宅に私はもどり、もう一度、ともちゃんの家の近くを歩いていたら、ともちゃんは、ゆきえと一緒に歩いていた。私に気付かない。わき目も降らずに、私が歩いて、ともちゃんとゆきえも、そうした。
私たちは、遅刻しかけていた。友情は、手元に残らないのだな、とこの時私は気づいた。手の爪は、本当に端正に切りそろえられていた。