また終わるために

いっしょにすごしたときめき

政治とは憎悪を理解する能力なんだよ

だから私は言うのだ。

骨肉の情愛というものは一度その道を曲げられると、おそろしい憎悪に変ってしまう。理解の通わぬ親子の間柄、兄弟の間柄は他人よりも遠くなる。

私は久雄の父親にたいする憎悪がよくわかる。じつによくわかる。

政治とは他人の憎悪を理解する能力なんだよ。この世を動かしている百千百万の憎悪の歯車を利用して、それで世間を動かすことなんだよ。

愛情なんぞに比べれば、憎悪のほうがずっと力強く人間を動かしているんだからね。

 

 

     三島由紀夫鹿鳴館