2023-09-01から1ヶ月間の記事一覧
彼は静かな深い海の中で暮らしているかのような声で話した。時々感情のさざ波があって、それがより一層の静けさを際立たせる。 まきの、と私を呼ぶ。まきの。 僕は君がたまたまそこにいたから君を選んだというのではなく、君でないといけなかったんだ。 ほん…
過去の景色を全て天にあずけて昇華してしまいたく、結局それも人の手で、私自らの手で、削除させていった。一つ一つ成仏してくれ、と願いながら。 私はそれでも過去の人を少し残しておいた。美しい過去の地獄もあるのだから。それは忘れられないし、忘れるべ…
いつか私も、あなたの季節の一つに数えられることになったらと思うとこわい。 いつかあなたが「そんな子もいた、いつの間にか途切れた」と話していた過去の誰かのように、私もいつか君の季節のひとつになることもあるだろう。 私は不安と戦い、弱さと向き合…
愛してる誰かを求めることは傷つくことの始まりと知っていようとも、私はなおそれでも愛することをやめない性懲りのない恋愛主体である。 急にもつれあった縁を喪うのは早いだろう。すぐに手に入ったものはなんでも壊れやすく喪いやすい。それを思うと恐ろし…
優しい静けさがあって、あなたはそこにいて、私はここにいて、その間の無限は最後の楽園かもしれないと思う。 どうあっても抗えない欲望と、それを手に入れた心地のする優しい静けさ。あなたの優しい静けさの中で、私は生まれ変わる。全てが満たされると同時…
私がだんだん欲張りになっていくのがわかる。相手の欲望が自分の欲望だなんて、嘘だ。私は私で相手の全てを望んでいるのだから。 憂鬱な気分で洋服をみていた。死にそうになりながら、コンビニで愛を探した。何も売られていない、全てがあるのに。私は世界か…