また終わるために

いっしょにすごしたときめき

まきのまきなの小説

【小説】電話、電話、電話・・・・・・ ②

「この店にお座敷の席があるのは、シーシャの提供もされてるからみたいですね」と千裕さんは言った。ほら、と言って壁の案内書きを指さした。「”フッカー”?」私は目に飛び込んできた文字のまま口にした。千裕さんは「フッカーというのはヒンディー語でシー…

【小説】電話、電話、電話・・・・・・ ①

私が携帯電話をスマートフォンに替えたのは、ほんの2、3年前のことで、それまではフィーチャーフォン(いわゆるガラケー)を使用していた。 けど、LINEもできない上に、私は夫へのSMS(ショートメーリングサービス)だけで月々の支払いがスマートフォンの契約と…

【小説】愛を探し、会いに迷い、アイを知り ③ ~伝聞と嘘と、本当の話~

夢の途中、マフィは目をさました。自室でうたた寝をして、夢を最後まで見送ったことがない。いつでも途中で途切れ、ああまだ私は死んでいなかった、と取り残された気持ちになるのである。友人が、何か言っていた気がした。しかし、もう幻である。すべてはも…

【小説】愛を探し、会いに迷い、アイを知り ② ~伝聞と嘘と、本当の話~

まきのまきなは、2度結婚し、そして、その両方をうしなったのだった。つまり、離婚を2度経験している。しかし、どちらの相手も海外のひとだったので、戸籍はきれいなままである。一度目は10年間一緒に連れ添ったひとがいた。韓国の男性だ。まきのはこの経…

【小説】愛を探し、会いに迷い、アイを知り ① ~伝聞と嘘と、本当の話~

まきのまきなは正直、愛をまっすぐに信じ、表現するマフィがうらやましかった。 私は嫉妬を知らないといいつつ、うらやましいという感情を知っている、そして私憤を義憤にするという作業をもしかしたら無意識に組み立ててしてしまっているのではないだろうか…

【小説】ヴィーのキス ~伝聞と嘘と、本当の話~

ヴィーが言った。俺はマフィが好きだけど、まだ曖昧な感情のままな気がする。愛に関して証明できるまで、なにもしたくないし、どこにも行きたくないんだ。だから、元カノのそばにいたままでいる、と。 学者肌のヴィーは、愛についてグラデーションがあると思…

【小説】トモエの心臓2 ~伝聞と嘘と、本当の話~

マフィはくせ毛で、色も白く、少し西洋の血が入っているらしい。私はそれをマフィから今聞いて、浴衣姿の彼女がなんだかレアな玩具の人形のような心地がした。 ここの料理、美味しいね。私、韓国料理って1番好きだな、とマフィが言った。唇をすぼめて、やや…

【小説】トモエの心臓 ~伝聞と嘘と、本当の話~

トモエはバイ・セクシャルだ。女性という生物学的定義があり、戸籍の上でも女、とされているものの、恋愛パートナーには女性も含まれるし、もちろん男性も含まれる。トモエにとっては、相手の性別よりも、自分がその相手にどのくらい憧れと焦燥を抱くかとい…

【小説】T周辺 ~嘘と伝聞~

マフィは言った。私はなんでも決めつけるの。そうして心の平安を得るの、と。学者肌のヴィーは、「それは株式用語で予断の罠というのだよ」という見当違いの返事をした。マフィは、私と目を合わせてやれやれ、と肩をすくめた。 私たちはいわゆる機能不全家庭で…

【小説】友人

爪切りは、めんどくさいけども、両手の爪が長いままだと、習っているピアノにも不利だし、なんとなく調子が出ないんだ。だから、今朝全部そろえて短くした。 とくに不調はないかもしれないけれど、毎朝眠くて、毎週木曜日の学年集会はうっとうしい気持ちにさ…

【小説】嵐の女神

まきな、ごめんね、ごめんね・・・・・・。 深夜の車内はひんやりしていて、空間というより、空洞のように感じた。母親の声が涙にぬれて、ごめんねを繰り返す。 左腕に包帯が巻かれていて、これが母親の腕か、と思った。私は眠い深夜に父親の車に乗せられて父親の…